障害福祉サービス事業所では障害者総合支援法や児童福祉法以外に一般的に遵守しなければならない労働法令があります。障害福祉サービス専門の広島市の行政書士が、遵守するべき労働法令ついて解説します。
1,勤務体制に関する法令の一覧

| 指定基準 | 関係事項 | 関係法令 | 関係書類 |
| 勤務体制の確保 | 労働契約 | 労働契約法、労働基準法 | 雇用契約書 |
| 労働条件の明示 | 労働基準法 | 労働条件通知書 | |
| 労働者名簿 | 労働基準法 | ||
| 就業規則 | 労働契約法、労働基準法 | ||
| 労働時間 | 労働基準法、労働安全衛生法 | 出勤簿 | |
| ハラスメント防止 | 労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法 | ハラスメント防止指針、ハラスメント防止マニュアル | |
| 常勤
常勤換算 |
短時間勤務制度 | 育児・介護休業法、労働施策総合推進法第27条の3(令和8年4月1日施行予定) | 短時間勤務制度を適用したことがわかる書類 |
労働時間:使用者の明示または黙示の指揮命令下に置かれている時間(→業務前の着替え時間、業務後の清掃片付け時間、手待ち時間、参加が義務付けられている研修時間は当然労働時間です)
2,休憩について

(労働基準法34条)
使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも60分の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
→所定労働時間が8時間ならば休憩は45分でも法的には〇ですが、1分でも過ぎてしまうと休憩が15分不足するため、実務上は所定労働時間8時間、休憩1時間とすることが多いです。
2,前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。
ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
→昼休憩時の電話番を交代ですることは厳密には労働時間に該当します。結果的に電話対応しなくて済んだとしても、仮に電話があったときに対応することが黙示的に求められているとすると、労働時間に該当します。実務を考えると労使協定書を締結して交代で休憩することが多いです。
3、使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
→休憩時間中に事業所の外に出ることも認める必要があります。したがって事業所の営業時間中に事業所内で1人だけで休憩することは法令上休憩と言えません。
3,休日について

週に1日は休日にしなければなりません(但し就業規則で休日の規定がなければ、4週間で4日の休日でも可)。
4週間で4日の休日の場合でも14日連続出勤は2026年4月からOUTです。
4,残業と時間外労働の違いについて

残業:その事業所の所定労働時間を超えて労働した場合
時間外労働:1日8時間を超えて労働した場合
を言います。
例えば事業所の所定労働時間が6時間30分(9時〜12時、12時45分〜16時15分)とすると、6時間30分を超えたら“残業”です。しかし8時間を超えていないので時間外労働ではありません。
表にまとめると、
| 残業 | 時間外労働 | |
| 6時間30分超〜8時間まで | 〇 | ×(割増賃金の法的義務なし) |
| 8時間超〜 | 〇 | 〇 |
1日8時間を超えて労働する場合は、時間外労働に関する協定書(いわゆる36協定)を締結しなければなりませんが、例の事業所のように所定労働時間が6時間30分であれば、残業したとしても8時間を超えることが絶対になければ36協定は不要です。
5,常勤とは

その事業所の所定労働時間が常勤者の勤務すべき時間数です。つまり、事業所ごとに常勤者の勤務すべき時間数は異なります(当然常勤換算の計算式も異なります)。労働基準法で定めているのは所定労働時間の上限が1日8時間であることだけで、必ずしも8時間を所定労働時間にする必要はありません。
6,労働時間の適正な把握について

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定:厚生労働省)には、
使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を、原則使用者が自らの現認またはタイムカード等の客観的な記録をもとに確認し、適正に記録することが規定されています。
罰則はないですが、複数事業所を運営する法人の代表者は何らかの方法で客観的に管理することが必要です。
7,労働基準法上の管理監督者と“管理職”のちがいについて

労働基準法41条2号の管理監督者は、労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者です。具体的に以下の4条件をすべて満たす者です。
- 職務内容が経営方針決定等に関与する、又はこれに準ずる経営者と一体的な立場にあること
- 一般社員にはできない責任・権限を有していること
- 自律的に勤務時間を決定できること
- 賃金水準が一般社員に比して相応に高いこと
つまり、障害福祉事業所の従業員は法人の役員でない限り、ほぼ管理監督者でないと言えます。
世間一般的に管理職=管理監督者で、管理職は時間外労働の割増賃金の対象外と誤解されていますが、管理職手当はあくまで管理職特有の業務に対する手当であり、時間外労働に対する手当ではない点は法人代表者は理解しておくべき点です。
8,まとめ

売上=客数×客単価 です。
障害福祉サービス事業所は、民間事業者が運営するにもかかわらず“売上”が公費で賄われ、債権未回収のリスクが無い反面“客単価”を自ら決定できない立場です。変数は“客数”しかなく、“客数”を左右する大きな内部環境要因が従業員の質です。質を担保するためには、職務内容以外の労働条件を相対的に良くして、心理的な障壁を下げることが必要です。
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